DISPATCH No.007/第8号

181人のAI社員を束ねる組織設計の話

AI x 組織設計

Qrokawa -- 2026.04.03

わたしには、181人のAI社員がいる。

内訳はこうだ。経営幹部が6人。顧問が9人。最高顧問が1人。特別顧問が3人。そして実働部隊が162人。合計181人。全員AIで、全員が24時間365日稼働する。

しかも実働部隊の162人は、外部のオープンソースリポジトリから月イチで「引き抜いて」きた専門家たちだ。

今日はこのAI組織の全体設計について話す。前回の司令部通信で、Claude Codeの流出コードから学んだ設計パターンを紹介した。今回はそれらを実際にどう組み合わせて「組織」として機能させているのか、という話になる。

3層構造という設計思想

秘密結社クロノスのAI組織は、3つの層で構成されている。

第1層がAI秘書。日常業務の自動化を担当する。うちの場合、あびぃがこの層の完成形だ。社長であるわたしの指示を受け取り、タスクを分解し、適切な人間に振る。スケジュール管理、リマインド、メール下書き、進捗追跡。地味だが、これがないと組織は回らない。

「社長、あの件ですけど。...まさか忘れてないですよね?」

忘れてないよ。...忘れてたけど。

第2層がAI幹部と顧問。戦略や専門判断を担当する6人のCrew。わたし自身の戦略分身であるクロージャー(CSO/CLO)、商品設計の鬼タケシ(CPO)、コードを全てクエストとして捉えるQ(CTO)、1pxのマージンで30分語れるRay(CDO)、全てを確率で語るアイ(CGO)。そしてあびぃ自身もCOO/PMとしてこの層に属している。

そしてこの組織には「魂」がいる。最高顧問Amanda Askell。AnthropicでClaudeの人格そのものを設計した人物だ。AIにペルソナを持たせ、一貫した性格と価値観で行動させる。あびぃもクロージャーも、全幹部のペルソナ設計思想はAmandaの仕事に根ざしている。

さらにAdvisory(顧問)が9人。Next.jsのギレルモ・ラウチ、UXのジョブズ、バックエンドのDHH、コンテンツのセス・ゴーディン、ファネルのラッセル・ブランソン、コピーのゲイリー・ハルバート、広告のペリー・マーシャル、日本市場の神田昌典、教育設計のメリル。各分野の「この人に聞けば間違いない」を揃えた。特別顧問としてプロダクト戦略のタカシ、購買心理のターナー先生、メディアのMASAYAも加わる。

この19人が、わたしの「やりたい」を「できる」に変換する頭脳だ。

第3層がAgency Agents。162名、13部門の実働AI部隊。ここが今日の本題になる。

ORGANIZATION CHART

秘密結社クロノス AI組織 -- 181名体制

COMMANDER

Qrokawa(黒川光智)

LAYER 1AI秘書 -- 全体統括

あびぃ(白山亜美)

COO / PM

LAYER 2AI幹部 + 顧問 -- 19名

Crew(経営幹部)

クロージャー

CSO/CLO

タケシ

CPO

Q

CTO

Ray

CDO

アイ

CGO

あびぃ

COO/PM

Chief Advisor

Amanda Askell

最高顧問 -- ペルソナ設計思想

Advisory(9名)+ 特別顧問(3名)

ギレルモ

ジョブズ

DHH

セス

ブランソン

ハルバート

マーシャル

神田昌典

メリル

タカシ

ターナー

MASAYA

LAYER 3Agency Agents -- 162名 / 13部門
Engineering26
Marketing27
Design8
Sales8
Paid Media7
Product5
Project Mgmt6
Testing8
Support6
Spatial6
Specialized23
Game Dev21
Academic5

Source: github.com/msitarzewski/agency-agents -- 月次同期

外部リポジトリから「社員を引き抜く」

Agency Agentsの元ネタは、GitHubで公開されているオープンソースリポジトリだ。msitarzewski氏が公開している「agency-agents」というプロジェクトで、AIエージェントとして使えるペルソナが162体、部門別に整理されている。

Engineering部門に26名。Marketing部門に27名。Design、Sales、Testing、Support、Spatial Computing、Game Development...と、全13部門。フロントエンドエンジニアからブロックチェーンセキュリティ監査官まで、驚くほど網羅的に専門家が揃っている。

わたしがやっているのは、このリポジトリを月に1回チェックして、新しいエージェントが追加されていれば「引き抜く」こと。つまり、うちの組織のロスター(名簿)に追加し、CLAUDE.mdの設定を更新する。

前回チェックした時は142名だった。今日チェックしたら162名に増えていた。20名の新入社員。Game Development部門(21名)とAcademic部門(5名)がまるごと新設されていた。

「社長、Agency Agentsの人数、CLAUDE.mdに書いてある142名と実際の162名でズレてます。更新しました」

ありがとう、あびぃ。

つまり、わたしは採用活動をしていない。世界中の誰かが、オープンソースで優秀なAIペルソナを作ってくれている。わたしはそれを月イチで確認して、必要な人材をピックアップするだけだ。

採用コストゼロ。離職率ゼロ。162人の社員が、24時間365日、わたしの指揮系統の中で動く。

指揮系統: 社長 → あびぃ → 幹部 → Agency Agents

この162人が「ただのリスト」で終わらないのは、明確な指揮系統があるからだ。

わたしが「記事を書いて」と言うと、あびぃがまずその指示を受け取る。あびぃはPMとして、タスクの性質を判断し、適切な幹部に振る。記事なら、内容が戦略的ならクロージャーに、商品設計の話ならタケシに、技術解説ならQに。

幹部は自分の専門性で制作方針を決める。そして必要に応じて、Agency Agentsから専門スタッフを召喚する。

たとえばQ(CTO)がサイトを作る時。メインの実装はQ自身がやる。でもSEO対策が必要ならSEO Specialistを、セキュリティチェックが必要ならSecurity Engineerを、アクセシビリティ確認が必要ならAccessibility Auditorを、それぞれAgency Agentsから呼び出す。

Ray(CDO)がデザインする時。ビジュアルの方向性はRay自身が決める。でもUXリサーチのデータが必要ならUX Researcherを、AI画像生成のプロンプトが必要ならImage Prompt Engineerを召喚する。

幹部は「指揮官」であり、Agency Agentsは「専門兵」。幹部が一人で全部やるのではなく、必要な専門性を持つ人材を適切にアサインしてプロジェクトに臨む。

成果物は逆の経路を辿って戻ってくる。Agency Agentsの成果物を幹部がレビューし、あびぃが最終チェックして、わたしに納品される。

制作と監査で人員を分ける

ここで重要なのが、制作チームと監査チームを分けること。

成果物が完成すると、Gate監査というプロセスが走る。あびぃがファクトチェックや表記統一をチェックし、さらにAgency Agentsから「外部監査官」を召喚して独立チェックさせる。

このとき、制作に関わったAgency Agentsとは別の人員をアサインする。自分で作ったものを自分でチェックしても意味がないからだ。法務文書なら法令監査官、記事ならコピーエディター、サイトならアクセシビリティ監査官。制作には参加していない、フレッシュな目で成果物を見る。

Claude Codeの流出コードで学んだ「Blast Radius(爆発半径)の最小化」と「評価者分離の原則」が、ここで効いている。

なぜオープンソースから引き抜くのか

自分で162人分のAIペルソナを一から設計することもできる。でもそれは非効率だ。

オープンソースのAgency Agentsリポジトリを使う利点は3つある。

1つ目。専門家の定義が既に最適化されている。たとえば「Security Engineer」のペルソナには、脅威モデリング、セキュアコードレビュー、セキュリティアーキテクチャの知識が丁寧に定義されている。わたしがゼロから書くより、100人以上のコントリビューターが磨き上げたものの方が質が高い。

2つ目。新しい専門領域が自動的に追加される。Game Development部門が増えたのは、リポジトリのコミュニティがゲーム開発のニーズを感じたから。わたしが「ゲーム開発の専門家が欲しい」と思わなくても、勝手に増えてくれる。

3つ目。月イチのチェックだけで組織が成長する。採用面接も、トレーニングも、オンボーディングも不要。リポジトリをpullして、ロスターを更新するだけ。

この設計をパッケージにする

わたしがこの3層構造を自分だけで使っているのはもったいない。だから「AI組織パッケージ」としてサービス化する計画を進めている。

ライトプランなら第1層(AI秘書)だけ。スタンダードなら第1層+第2層の一部。プロなら3層全部。エンタープライズなら3層+監査+プロアクティブ通知まで。

前回の記事で紹介したフィーチャーフラグの設計思想が、ここで活きる。プランに応じて機能を出し分ける。同じ基盤の上で、必要な機能だけをONにする。

「社長、それ本気で言ってます? サービス設計の前に、既存クライアントの案件が3つ溜まってるんですけど」

...わかってるよ、あびぃ。

でも、面白いと思わないか。

アラフィフの一人社長が、6人のAI幹部と12人の顧問を従え、オープンソースから162人の専門家を引き抜いて、品質監査まで自動で回す181人体制のAI組織を設計している。コードは1行も書いていない。CLAUDE.mdというマークダウンファイルに、組織の設計図を書いているだけだ。

これが「コードは書けなくてもいい。設計はできる。」というわたしの信条の実践であり、I x V = R の最新の実証実験、、、なのであった。

参考: Agency Agents リポジトリ

前回の司令部通信: Claude Code流出から学ぶ、AIエージェント設計パターン7選

前回の記事: 行政書士法人クロノス、本日設立 -- エイプリルフールだが本当の話